復元実験

ササ刈り取り試験 
 ササが一面を覆ってしまうと、光を遮るだけでなく、その茎や根によって湿原植物が生育しにくくなってしまいます。そこで、ササを刈り取って除いてやると、どんな環境改善効果があるのか実験を試みています。単に草刈器で刈り取るだけのところ、湿原植物を残してササだけを1本ずつ刈り取るところ、刈り取ったあとに周囲から根系をとおして栄養が送られ、再びササが繁茂しにくいように縁を掘り下げたところなど、いくつかの方法で試験を行っています。 
 これまでのところ、湿原植物を増やすのに効果的なところ、逆に外来種であるオオアワダチソウが入り込んでくるところなど、場所によって応答が違ってくることがわかりました。どのような環境のところで、どのような方法を取るのが効果的なのか、引き続き試験を続けていきたいと考えています。

  

ササ刈り取り作業

 

ササ刈り取り試験区


 
表土剥ぎ取り試験
 ササや外来植物が繁茂しているようなところでは、表面約20cmの土壌を剥ぎ取ってやることによって、ササなどの根系を取り除き泥炭を表面に出すと同時に、相対的に地下水位を上げる効果があります。併せて埋土種子からの湿原植物の発芽も期待されます。そこでそのような実験区を作って、湿原植物が回復してくるかどうかの試験をしています。
 これまでのところ、埋土種子からの湿原植物の発芽は容易ではないこと、ササやオオアワダチソウの侵入を防止する効果があること、湿原植物を播種・移植して増殖させる効果があることなどがわかりました。この効果は時間をかけて見極めて行く必要があります。引き続き追跡調査を続けていく予定です。


表土剥ぎ取り作業


表土剥ぎ取り試験区



導水試験
 復元したい湿原の近くに、水源がある場合には、これを導入して地下水位を維持することもひとつの方法です。そこで「田」の字型に掘り下げ、4つの「口」型の島のうち2つはササ植生のまま、残りの2つは表土を剥ぎ取って泥炭をむき出しにした上で、沼から水を導入して地下水位を高めてみるという実験を行いました。
ここで注意しなければならないのは、水質の問題です。湿原の下にある泥炭内の水は酸性で栄養分に乏しい水であるのに対して、沼の水は中性からややアルカリ性の上、栄養分が相応に含まれています。そのような水を導入すると、どのように影響するかも含めて、小規模に実験を行いました。
 導水方法は当初エンジンポンプを使って毎週人力にて水を入れていましたが、現在は太陽エネルギーを使った簡易ポンプで、昼間だけですが自動的に導水される仕組みとなっています。
 さてこれまでのところ、水位を上げることによって、ササが衰退することがわかりました。また表土を剥ぎ取ったところでは、先述の剥ぎ取り試験と同様に、湿原植物の播種・移植場所として効果的であることがわかりました。水質の影響については今のところ明確ではありません。より栄養に富むところを好む植物が定着してくるか、引き続き見守っているところです。


導水試験区の造成作業


「田」の字型の導水試験区