越後沼湿原への誘い -かつての石狩大湿原の名残-

 北海道江別市のはずれに位置する越後沼とその周りの湿原は、かつて55,000haあったとされる日本最大の石狩湿原のわずかな名残を留め、同時に札幌圏という大都市近郊に残存する極めて貴重な田園地域内の自然です。沼畔や草原にはかつての原野を想わせる湿原植物が見られ、沼や草原には季節に応じて多くの野鳥が飛来します。開拓の原風景としてのみならず、学術、緑地保全、教育、地域資源の各面からも価値が高いものです。
 しかし今、面積が著しく減少した結果、乾燥化によってササが著しく繁茂し、多くの湿原植物は日ごとに姿を消しつつあり、里地の原風景である湿原の存続に向けた保全対策を考える時が来ています。
 そこで私たちは「越後沼研究会」を結成しました。各人の得意な知識と技術を持ち寄り、動植物や水文環境の実態とその重要性を客観的に明らかにするとともに、湿原植物を復元するために、各種の実験を試行錯誤で行っています。これらの成果をまとめつつ、将来、本格的な再生事業に結びつくことを夢見て、等身大の活動をしています。
  “越後沼には龍神が宿り、神社と沼とを毎年行き来する”と言われ、地元の方により、毎年神様の通る道の丁寧な草刈りがされており、人々と自然とを結ぶ魂の絆がそこにあります。北海道中央部の「里地の原風景」であるこの湿原を、幌向(ホロムイ)原野の最後の砦として何とか保全したいものです。

 

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